光市母子殺害事件と性的虐待

http://news.livedoor.com/article/detail/6294536/ より転載


 公判でも明らかにされたが、彼は特異な家庭環境で育った。父親は事あるごとに暴力を振るい、したたかに殴られた夜には、のちに自殺する母親がFの寝床に潜り込み「生まれ変わったら結婚しよう」「あなたの子供がほしい」……と囁いていたという。彼が育ったこうした“健全とは言い難い成育環境”は、発達障害やコミュニケーション不全というかたちで、のちにFを苦しめることになる。
 「凶悪殺人鬼」のイメージとはほど遠い、同世代の青年よりも童顔で、社会性を欠いたアンバランスな言葉遣い……。贖罪の方法すら自身で見つけられないほど幼稚だった彼が、30歳になり、ようやく自らの犯した罪に真摯に向き合えるようになっている……  そう、面会時に私は感じた。


*被告の被害者女性殺害と屍姦の動機は、被告に「性的虐待」を加えていた実母に対する<無意識の復讐>、赤ちゃん殺害の動機は、幸福な子どもに対する<無意識の嫉妬>であった可能性があります。被告が、獄中から友人に宛てた手紙で「俺も男だ!」と強調していることが気になります。
 「発達障害は脳機能障害である」という俗説がありますが、それはあくまで「仮説」であって、医学的には何ら証明されていません(高岡健『やさしい発達障害論』批評社、2007年)。少年への性的虐待発達障害の関係については、リチャード・B・ガートナー『少年への性的虐待ー男性被害者の心的外傷と精神分析治療ー』(作品社、2005年)や、山岸凉子のマンガ「スピンクス」(白泉社、1980年)が参考になります。
 被告の弁護団がもう少し優秀であれば、判決は無期懲役になっていただろうと思います。こういうこともあるから、私はそもそも死刑制度に反対なのです。