「入信即布教」を再考する

 日本の新宗教の中には、入信者をすぐに布教に出す、あるいはかつてはそうしていたという教団があります。例えば天理教も、昔は入信者に「(神さまの)十全の守護と(心の)八つのほこり」という教義の基本中の基本を教えると、即布教に出していました(今はやっていません)。新宗教のこうした「入信即布教」という方針は、しばしば教勢を拡大しようという新宗教の「教団エゴの現れ」として語られてきました。私は、新宗教の「入信即布教」という方法に教団エゴの現れという側面があることを否定しません。また、こうした方針が入信者の福祉に悪影響を与えていたことも多々あっただろうと思います。
 しかし、自分が「たすかりたい」という動機から入信してきた人の視点と行動を、他人を「たすけたい」という方向に切り替えさせることには、一種の「認知行動療法」としての側面もあったと思います。「入信即布教」によって、軽い心身の不調、特に心気症や疼痛性障害を含む「不安障害」が治癒することも、現実にあったのだと思います。