椎名林檎論

*大学アンケート「学問の道標 好きから始まる学び」より


(1)先生のご専門や研究テーマについて教えてください。
 近現代日本における「宗教とジェンダー」、とりわけ「宗教と男性性(男らしさ)」というテーマを、宗教やポピュラー文化を題材にして追求しています。ジェンダーとは、性差をめぐる社会的文化的な(それゆえに変わるし変えることができる)関係のことです。


(2)先生のご専門や所属の学科で「アイドル」を研究テーマとして取り上げる場合、
  どのような視点や分野からアプローチできますか?
 たとえば、現在は人気ロックバンド東京事変のボーカルである椎名林檎さんの場合を取り上げてみましょう。好きなファンはファッションまで真似するという、カリスマ性のあるアイドルです。椎名林檎の音楽作品には、ジェンダー論の観点から見て興味深いものが多いのです。彼女が、男尊女卑の伝統が強い福岡で生まれ育ったことも関係しているかもしれません。


(3)(2)のアプローチから「アイドル」を追究する場合、どのような研究ができますか?
   実際に行われている研究や、想定される研究内容について具体的に教えてください。
 たとえば、椎名林檎の初期の大ヒット曲「歌舞伎町の女王」(1998年)の歌詞は、男性向けの歓楽街で高級娼婦の母に捨てられた娘が、自分も高級娼婦になるという内容です。この曲の歌詞は、男性中心社会において、現代的な母娘関係が抱えがちな葛藤をデフォルメ(誇張)したものとして分析することが可能です。


(4)(3)の研究成果を社会でどう活かすことができるか、
   また、その研究を通して学生がどのようなことを発見し、深めることができるか、
   先生のお考えを教えてください。
 椎名林檎の初期のヒット曲には、「痛い」内容のものが少なくありません。デビュー当時は、彼女自身が「女ぎらい」を内面化して「自己嫌悪」してしまい、「生きづらい」人だったのではないでしょうか。円熟した近年の音楽作品からは、そうした「痛さ」が消えています。彼女は、出産を契機として、「女ぎらい=自己嫌悪」から解放されたのではないでしょうか。


椎名林檎と「女ぎらい」からの解放
http://d.hatena.ne.jp/kkumata/20110623/p2