認知療法 専門家を育成…精神・神経研究センター
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=43402 より転載
うつ病治療 薬だけに頼らない
うつ病治療が薬物治療に偏る中、国立精神・神経医療研究センター(小平市)で、薬だけに頼らない治療の専門家を育てる認知行動療法センターが今月、本格的に始動した。
欧米で普及している「認知行動療法」の専門家育成機関という全国でも珍しい組織で、関係者の期待が高まっている。
認知行動療法は、物事に対する考え方や行動パターンを変えることで、患者の心の負担を軽くする治療法。地域医療に認知行動療法が定着した英国では、薬物療法と併用することで、自殺率が低下するなどの効果が出ているという。
国立精神・神経医療研究センターでは4月、「認知行動療法センター」の事務局が発足。6月には、初代センター長に日本認知療法学会の理事長の大野裕氏を迎え、体制を整えた。
今後、医師、看護師、保健師らを対象に、研修会を開催。認知行動療法について講義やグループワークなどを通じて、年間100人の専門家を育成することを目標としている。
日本では、うつ病治療は抗うつ薬など薬物療法が中心というのが実情だ。読売新聞が2010年3〜4月、全国119の精神科診療所から回答を得た調査によると、薬物偏重の傾向があると「強く思う」が19%、「ややそう思う」が54%と7割が懸念を示した。しかし、薬だけで症状がほとんどなくなる人は6割程度とされ、頭痛などの副作用が出る恐れがある点も含めて、薬物療法の課題が浮き彫りになっていた。
こうした中、認知行動療法への関心が高まっていたが、日本では、研修を受ける機会が乏しく、専門家の育成が課題だった。センターの設立は、こうした声に対応したもの。東日本大震災の被災者のうつ病対策という点でも、専門家の育成を求める声は強まっている。
大野センター長は、「自殺予防という社会問題の打開につなげる意味でも、専門家の育成は国の重要課題。多くの人材を育てていきたい」と話している。(大津和夫)
(2011年7月6日 読売新聞)