注射を怖がる男とは?

 これは看護婦の業界ではよく知られていると思いますが、注射をむやみに怖がるのは、暴力団関係者と職業軍人と、たしか医者でした。これらは人を痛い目に合わせがちな職業(?)ですね。
 南方軍総司令官の寺内元帥はシンガポールで梅毒にかかりましたが、当時は砒素剤の静脈注射しかなく、その注射器(かなり太い注射器です)を見ただけで卒倒したそうです。その軍医中佐は、「閣下に何をするか!」と上官に殴られ、「まだ何もしておりません」と答えたということです。戦争中、軍でさかんにささやかれた話です(中井久夫『こんなとき私はどうしてきたか』医学書院、2007年、p83)。


男性学的にも、興味深い話です。<痛みに対する想像力>が敏感なのでしょう。