自助グループと精神的成長

 「学ぶことはなくなったけど、新しい会員の自分のしてあげられることはある。自分を仲間にして励みにしているものに、そこにだまって出席するだけで、役にたっている。そのことに気がつけばいいのです。AA(熊田註;断酒のための自助グループであるアルコホーリクス・アノニマス)の始まりの二人も、自分が飲んでしまって約束の場所に行けなかったら、どんなに相手はがっかりするだろう、そう思って頑張った。そう思うことがそれぞれの自分の断酒を支えたのですね」
Nさんは大きな声をあげた。
 「そうなのか。自分がしてもらうことばかり考えていた人間が、そこで、自分が何をしてあげられるだろうと考えていくようになる。こうしてグループから離れるどころか、活動に積極的に参加する。それは内面の成長を意味しているんですね。それと同時に、それが酒への誘惑への抵抗力をまた一段と強くすることになる」(なだいなだ『アルコール問答』岩波新書、1998年、pp.173-174)。


*AAのような自助グループが、「人たすけたら我が身たすかる」と説く宗教と同じく、参加者の精神的成長を通じての問題解決を目指していることがよくわかります。