うつ病と認知行動療法

 こういうことが役に立つというのは、つまり物の見え方が変わってくることなの。これを「認知行動療法」と言って、少し入り組んでしまって、治りがうまくいかなくなったうつ病者にはとても有効な方法です。うつ病認知行動療法というのは、今、どんどん盛んになってきています。
 だけど「考え方を変える」というけど、「考え方を変えないかん」と言ったら本当はだめなの。考え方を変えるんじゃなくて、事実の、外界の見え方が変わってくるようにする。「見え方を変えなさい」と言ったって、見え方は変わらんからね。そうすると、見え方が変わるようなキーワードをその人の中に作り出していく。
 それには、「愚痴」とか「内なる対話」ということが役に立つ。そういうことができるようになった人は、より一本気ではなくなってしまうから、職場復帰のほうの意欲が自然なものになってきます。味わいがね(神田橋條治うつ病の精神療法」『神田橋條治/医学部講義』創元社、2013年(初出2010年)、pp.264-265)。


*神田橋氏は、「認知行動療法うつ病に必ず効く」などとはいっておらず、認知行動療法は「少し入り組んでしまって、治りがうまくいかなくなったうつ病者」にとても有効な方法、とあくまで適用範囲を限定していることに私は注目したいです。