私は、昨今の日本における心の業界でよく用いられる「自己肯定感」という言葉が、抽象的すぎてあまり好きではありません。「生きることとの和解」や「『ゆとり』の回復」という言葉のほうが、しっくりきます。
―「エレーン、生きていてもいいですかと誰も問いたい、エレーン」(中島みゆき『エレーン』)
―私の人生観はわりと単純で、善人と悪人というんじゃなくて、余裕のある人間と、余裕のない人間とがあるんだろうと。それは程度の差もあるし質もあるだろうけど、私はそう考え、そういう軸で人をみている(中井久夫「家庭の臨床」『「つながり」の精神病理』ちくま学芸文庫、2011年(初出1985年)、pp.97-98)。