エロス、女だって語りたい SNSが「本音」解放
http://digital.asahi.com/articles/TKY201302160179.html?ref=comkiji_redirect&ref=com_top_pickup より転載
エロス、女だって語りたい SNSが「本音」解放
【江戸川夏樹、佐藤美鈴】女性が「性」を真剣に見つめ始めている。タブー視される傾向にあった女性のためのエロスが、ネットや書籍で本音で語られるようになってきた。背景を探った。
■文学賞が活況
新潮社の女性編集者によって2002年にスタートした公募新人賞「女による女のためのR―18文学賞」。第12回の今年度は前回より約100作多い、821の応募作が集まった。
今月2日には、過去の受賞作を映画化した「自縄自縛の私」(竹中直人監督)が公開された。認知度も年々高まっており、応募者も中学生から80代までと幅広い。事務局の西麻沙子さんは「官能や性のタブーが薄まり、生活や風景の一つになった」という。
エロスが秘め事ではなくなってきたのはなぜか。「本音を語りやすい社会になったからだと思います」と週刊誌an・an(マガジンハウス)の熊井昌広編集長は分析する。
an・anは毎年1回、20年以上、セックス特集を企画してきた。昨年は歴代2位、通常の4倍となる80万部を売り上げた。
「ツイッターやブログ、SNSで女性の社会的発信力が強まっている。そこで語りたいのは『本音』。本音と建前の象徴ともいえるエロスに注目が集まるのは自然の流れです」
長年タブー視されてきただけに根強い抵抗感もある。「ただ、男性には許されてきたエロスを、女性も楽しんでいるというだけ。男女間のバランスがよくなるのはいいことではないでしょうか」
■女性用動画も
今年1月には、女性のためのアダルト動画を無料配信する会員専用サイト「GIRL’S CH(シーエッチ)」もオープンした。コンセプトは「女性の『見たい』を後押し」。小説家の岩井志麻子、内田春菊らが手がけるオリジナル動画のほか、男性向けアダルト動画の過激な場面を排除するなど女性目線で5分以内に編集し直した約1千本を配信する。
企画したアダルトビデオメーカー「ソフト・オン・デマンド」の田口桃子さんは、「潜在的にあった女性向けアダルト市場の需要が高まってきた。安心安全に楽しめる場を提供し、抵抗や偏見をなくしたい」と話す。
サイトはスマホ専用。まわりの目を気にせずに見てもらえるように、ワンタッチですぐに画面を隠せるような機能や音量が漏れていないか確認するページを設けた。約1カ月で登録数は約7千人。今後、月額制や動画販売なども検討していくという。
専門サイトを時々見るという27歳の会社員は「友達同士でもなかなか聞けないことを教えてくれる教科書みたい。妄想の世界にも入れますし。今は男女平等。エロスだって同じように楽しめばいいと思っています」という。
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■壇蜜「誰かとつながるツール」
TBS系「サンデー・ジャポン」(日曜、朝10時)などでブレーク。いま、「エロス」を象徴する存在として女性にも人気のタレント・壇蜜(32)に聞いた。
――女性のエロスとは
理由もなく衝動的に、何となく誰かとつながりたくなる、手段、ツール。一人として同じものはなく、みんな違うようにとらえている。だからこそ、色々な人が色々なことを語れる場があるのが大事。他人のことを知って、じゃあ自分は、と働きかけられる。そのとっかかりがサイトや動画だったりする。
――なぜこの時代に?
女の人が必然的に強くなんなきゃいけなくなったことが背景にあると思う。一生懸命仕事して社会的地位も手に入れて、でも何か足りない、と。女性として愛される、可愛がってもらうというのをちょっと遠くに置いてきた感があって、それを取り戻したいという願望がこういう世界観をつくったんじゃないかと思う。
――その中で、壇蜜とは
支持してくれる人のために、ある意味奴隷であり、ある意味導くものである。私は温故知新の「故」のほうでいたい。例えばネイルしない、髪が真っ黒だとか、オーソドックスな方法が今の女性にとっては斬新で、新しい選択肢につながったんじゃないかな。賛否両論あるけど、無関心でないということに対してどちらの感情もうれしい。手段として、アイコンとして、女性がものを選ぶときの選択肢の一つでありたい。
――現代の女性に向けて
100%でないことにコンプレックスを持っている時代。男性の色恋は多少寛容されても、女性ははしたないとされてしまう。そんな世の中はまだまだ続く。だから逆手にとって私たちが賢くなって、幸せになる。秘密を持ったり、自分のみっともないところを認めたりすることが、第一歩だと思う。