安倍政権「女性宮家」撤回へ

http://mainichi.jp/select/news/20121220k0000m010047000c.html より転載
安倍政権:「女性宮家」撤回へ にじむ保守色


 自民党安倍晋三総裁は、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設を新内閣では検討しない方針を固めた。安倍氏は男系維持が持論。民主党政権下で進んだ「女性宮家」創設をいったん白紙に戻す。安倍氏は連立を組む公明党に配慮して来夏の参院選までは保守色を可能な限り封印する構えだが、公明党が反発する可能性が比較的少ないとみられる皇室問題で独自色を出す狙いもある。
 女性宮家に生まれた子どもは父親が皇族ではなく、保守派には「将来的に女系天皇が誕生する懸念がある」として根強い反対論がある。
 政府が10月にまとめた論点整理で、女性皇族が結婚して皇籍を離脱した後も国家公務員として公務を続ける案を併記したことに対しても、安倍氏は「(政府が有識者に行った)ヒアリングで出ていない論点だ」と批判している。
 こうした中、衆院選自民党が圧勝したことも安倍氏を後押しする。毎日新聞のアンケートでは当選した新議員の59%が女性宮家創設に反対し、自民党に限ると反対は74%に上った。
 ただ、「女性宮家」創設は、自民党政権下での検討も踏まえたうえで出てきた案だ。小泉純一郎首相(当時)の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が05年11月にまとめた報告書は、天皇陛下の孫の世代に女性しかいなかった状況を踏まえ、女性・女系天皇の容認を提言した。民主党政権は、世論が割れる皇位継承問題には踏み込まなかったものの、この報告書を議論の下敷きにしている。
 安倍氏は当時、小泉内閣官房長官として報告書に関与した。「女系天皇は皇室の意向だ」という小泉氏の意向で男系維持の持論を封じていたとされる。しかし、06年9月に秋篠宮さまの長男悠仁さまが誕生したことで状況が変わり、直後に首相に就任すると、皇室典範改正問題を先送りした。周辺によると、安倍氏は「05年の報告書も含めて見直さなければならない」と考えているという。
 とはいえ、幼少の男系男子は悠仁さまだけ。未婚の女性皇族8人のうち6人は成人しており、結婚すれば近い将来に皇族数は激減する。新政権は、戦後の連合国軍総司令部(GHQ)占領下で皇籍離脱した旧11宮家の子孫(男系男子)の皇籍復帰を探るとみられる。
 その場合も、誰を皇籍に復帰させるのか、継承順位をどうするかなど課題は多い。中長期的にみて、男系による皇位継承が不安定な状況は大きく変わらない。【野口武則】