レベッカ「フレンズ」ー「位相萌え」の世界と若者

『カティング・エッジ』誌第42号(北九州市男女共同参画センター、2011年6月)より転載
ジェンダー・エッセー
レベッカ「フレンズ」―「位相萌え」の世界と若者


 以下に、日本の1980年代を代表するロック・バンドのひとつであるREBECCAの名曲「フレンズ」(1985年)の歌詞を部分的に紹介する。ドラマの主題歌などによくカバーされているので、日本の若者で耳にしたことがないという人は珍しいだろう。現代日本の若者にとっては、この曲はもはやJ-POPの古典的な名曲となっているように思われる。
(中略)
 歌う歌手NOKKO(女性)と、この曲で「君」と呼ばれている「フレンド」が異性か同性かは明示されていないが、私は同性(女性)だと思う。「フレンド」が異性(男性)なら、曲名は「ラヴァーズ」となるのではないだろうか。
 「君」が女性であるにせよ男性であるにせよ、この曲の魅力は「私」や「君」という「キャラクター」にあるのではなく、「私」と「君」とのつながりのあり方、権力関係(支配=従属関係)、つまり上下関係、ましてや主従関係ではない<つながり>のあり方、<関係の対等性>にあるのだろう。自称・乙女派文筆家の嶽本野ばらの表現を借りれば、聴き手はこの曲に「キャラ萌え」しているのではなく、「私」と「君」との<関係の対等性>に「位相萌え」しているのである。つまり、この曲が最初に大ヒットした1985年頃には、日本の若者たちはカップル関係において「対等な関係性」を求め始めていたのではないだろうか。
 その後、日本社会では男女共同参画社会基本法(1999年)が成立し、多様な個性の尊重と対等なパートナーシップの実現に基づく社会の実現への流れができた。「フレンズ」はリリースから四半世紀を経て、消えていくどころか、逆に現代日本の若者文化において古典的名曲としての地位を確立した。
 このことは、現代日本の若者たちが、男女共同参画社会へと向かっていく時代の大きな流れの中で、少なくとも心の奥底では、カップル関係においても、もはや権力関係(支配=従属関係)ではない<つながり>のあり方、「対等な関係性」を求めるという風潮が定着したことを物語っているのではないだろうか。