旧日本軍とトラウマ

 日本軍は、戦争神経症天皇の軍隊にあるまじきこととし、もっぱら「シュラークテラピー」(殴打療法)を行っていた。その治療像は、上級者にへつらい、下級者には威張る、なんとも嫌な人格への変換であった。これはトラウマによるトラウマの“治療”であるが、「トラウマによるトラウマの治療」は日本の専売ではなく、西欧でも第一次大戦の際に行われた(中井久夫『徴候・記憶・外傷』みすず書房、2004年、p.86)。


 旧日本軍の女性に対する戦時性暴力は、こうした<あるべき兵士像>とコインの裏表の関係にあるのでしょう。旧日本軍兵士は、確かに女性に対する暴力の加害者でしたが、同時に軍隊内部では被害者でもあったことを忘れてはならないと思います。

ー「個々人でなく戦争自体こそが犯罪学の対象となるべきである」(エランベルジュ)