キリスト教知識人としての上野千鶴子さん

 上野千鶴子さんの言論活動を、武田清子さんによる日本のキリスト教知識人の類型論にあてはめれば、新渡戸稲造のような「接木型」になろうとはしているが、実際は不敬事件を起こした内村鑑三のような「対決型」になりがちな人物、といえるのではないでしょうか。「接木型」とは、 日本の伝統的な価値の中から、台木になる要素のあるものを掘り起こしてくる、そこへキリスト教、いいかえれば普遍的な価値を接ぐという考え方のことです。上野さんは、ウーマンリブ田中美津さんを高く評価するなど、「台木になる要素」を掘り起こそうという姿勢はもっているのですが、欧米のフェミニズムを追うことにエネルギーを使いすぎて、フェミニズムを日本社会に土着化する努力が不十分だった感は否めません。「台木になる要素」を体系的に掘り起こすことは、後続のジェンダー研究者の使命でしょう。