あなたが鬼:投影というゲーム
行動化するボーダーラインの人の中には、不安や苦痛、羞恥心を和らげるために、「あなたが鬼」と呼ばれるゲームを用いる人がいます。これは、羞恥心、スプリッティング、否認、投影などと結びつくために、複雑なものとなります。
鬼ごっこは子どもにとっては楽しいゲームですが、ボーダーラインの人にとってこれはゲームではありません。自分が何者なのかわからず、自分に生まれながらの欠陥があると感じているボーダーラインの人たちは、常に自分を「鬼(it)」のように感じています。他の人たちが自分から逃れていくように思えるのですが、それは彼らにとっては心細い、非常に苦しいことなのです。ボーダーラインの人たちは、誰かを「鬼」にすることでこの苦しみに対応しようとします。これが投影と呼ばれます。
投影とは、自分の中にある不快な性質や行動、感情を誰か他の人のせいにして、自分では認めようとしないことです―時に相手を非難するという形で現れます。インタビューの中でエリス・M・ベンハムは、投影とは手鏡で自分を見るようなものだと説明しています。鏡の中の自分を醜いと思えば、あなたは鏡を裏返すでしょう。そうすれば鏡の中の醜い顔はあなたのものではなく、他の人のものになるのです(R・クリーガー&P・メーソン『境界性パーソナリティ障害=BDP―はれものにさわるような毎日をすごしている方々へー/第2版』星和書店、2010年、pp.61-62)。
*「向かい合う人の心は鏡なり」(日本の新宗教)