少女はやがて「魔女」になる

http://digital.asahi.com/articles/TKY201311020213.html?iref=comkiji_redirect&ref=com_fbox_d1 より転載
■少女はやがて「魔女」になる


 【聞き手・宮本茂頼】「魔法使いサリー」から放送中の「プリキュア」シリーズまで、日本アニメには魔法少女ものが連綿と続く。こうした系譜をジェンダーの視点から著書「少女と魔法 ガールヒーローはいかに受容されたのか」にまとめた須川亜紀子・関西外国語大講師に聞いた。


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 「サリー」や「ひみつのアッコちゃん」が放送された1960年代は、女性の地位が低く、魔法という能力で男性と同等か、それ以上の力を持ち、日常のトラブルを解決した。90年代の「美少女戦士セーラームーン」以降は、地球や正義のために戦闘する。男性と渡り合う強さで、かわいさとかっこよさを両立する。
 魔法少女にとって、恋愛は踏み絵だ。異性愛は大人になるステップで、少女期を卒業せざるを得なくなる。本来の意味の魔女は、大人が美しく着飾り、性的な欲望をかき立てる存在だ。純粋だった魔法少女が大人になっても魔法を使えば、一変して呪いを呼ぶ。だから、80年代、恋愛要素の多い「魔法の天使クリィミーマミ」も、ラストで恋愛が成就するが魔法は消える。
 「まどか」で面白いのは、魔法少女の一人の美樹さやかが恋愛に破れて絶望し、魔女になること。純粋な思いでなく、無意識に見返りを求めていた自分の汚さを見つけた。
 従来の魔法少女ものになかった負の要素を見せ、それにあらがう少女も示した。でも現実はそうですよね。夢と希望だけで少女期を過ごせるわけでない。仕事や私生活を愚痴る母親や女性教師も登場し、大人になること、つまり「魔女」になること、の現実的な問いかけもされている。