<粋>と<侠>

(前略)江戸時代の遊里に由来をもつ美意識・倫理意識としての「いき」をとりあげるについて、九鬼にはそうした「苦界」の女性たちへの共感があります。そのに虐げられたマイノリティー、社会的弱者のもつ独立の自律的個人としての意地、プライドを見て、そこに共感する姿勢があります。それは、早く北村透谷が「女侠」に男を気取らなければ人格の自由を維持できない屈折した自由の表現を見た姿勢に通じるものでしょう(坂部恵「日本のモデルニテ」『モデルニテ・バロックー現代精神史序説ー』哲学書房、2005年(初出2002年)、p75)。


九鬼周造や北村透谷の研究には、「反オリエンタリズム」の運動としての側面があるのでしょう。