「箱入り千鶴子」考ー「女ぎらい」のゆくえー

 『多重人格探偵サイコ MPD PSYCHO』は、原作・大塚英志、作画・田島昭宇によるショッキング・サスペンス漫画、及び、それを原作とした小説、テレビドラマ、新劇作品です。連載開始は『月刊少年エース』(角川書店)1997年2月号で、単行本の累計売上は900万部です。第1話で主人公の恋人の千鶴子という名の女性が、両手両足を切断された状態で宅配便で箱詰めして届けられるという描写があり、それをフィギュア化したものが「箱入り千鶴子」です。


「箱入り千鶴子」の画像(グロテスクです)
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 原作者の大塚英志氏は、上野千鶴子編『ニュー・フェミニズム・レビュー1 恋愛テクノロジー―いま恋愛ってなに?』(学陽書房、1990年)において、フェミニスト上野千鶴子氏と論争しています。大塚英志氏が「HanakoになれなかったHanakoたち―「ニュー」フェミニズムへの懐疑」という文章で上野氏を批判し、上野千鶴子氏が「おネエサンは怒るからね―大塚英志クンへの反論」という文章で反論しています。この文章を読んだときは、議論の分はどちらかといえば大塚英志氏のほうにあるように思いました。大塚英志氏に「男女平等に反対するのか?」と訊けば、言下にきっぱりと否定するでしょう。
 しかし、後に『多重人格探偵サイコ』の第1話で「箱入り千鶴子」を目にしたときには、大塚英志氏はなんとわかりやすい「女ぎらい」で、とことん「根の暗い」男性だな、と思いました。最近の「森美術館」の「四肢切断少女」の絵の展示についても、同じことがいえるのではないでしょうか。「女ぎらい」が一朝一夕になくなるものではない以上、こうした「性差別」的な作品を「鑑賞」することには、男性の「女ぎらい」を実社会よりは相対的に無害な形で満足させているという側面もあると思います。もちろん、だからといって公金を使ってこのような作品を公共の場に展示することに賛成しているのではありません。