日本人の病気観

 大貫恵美子『日本人の病気観ー象徴人類学的考察ー』(岩波書店、1985年)を久しぶりに再読しました。それから、上野千鶴子『みんな「おひとりさま」』(青灯社、2012年)を読了しました。


 これまで思想体系の面から物態化を考察してきたが、これだけでは全体像を捉えるのに不十分である。物態化は不幸・不運を他人のせいにしないという、きわめて明瞭な社会的機能を果たしている。すなわち、物態化は、患者は自己の弱点をそのままに受け入れなければならないと強調する森田療法、および、他人が自分に対してとった行為や態度がいかに自分を傷つけたかを考えるより、自分が他人からどれほど恩恵を受けたり助けられたりしているかを患者に認識させることを主眼とする内観療法の双方の背後にある論理と同様の機能をもっているといえる。物態化および日本固有の療法の背後にある論理とは、不幸や不運の原因・宇宙の中に存在する悪を他の人々、ことに患者自身に親しい人々の責任にしないことである(同上、pp.134-135)。