家入レオと尾崎豊

 家入レオ(昨年度レコード大賞最優秀新人賞を受賞した、現役女子高生のシンガソングライター)は尾崎豊に強く影響されていることを公言しているし、彼女を「女尾崎豊」と評する人もいるようです。しかし私は、家入レオは好きですが、尾崎豊は嫌いです。尾崎豊の音楽を聴くと、「グノーシス症候群」特有の「自分の悪を見る目の甘さ」や、「男であることの特権性」に対する自覚のなさが鼻につきます。尾崎は、覚醒剤中毒にして妻に対する暴力の常習者だったそうですが、いかにもという感じです。おそらく、精神分析でいう「投影的同一視」(自分の怒りを相手の怒りとして感じること、要するに「下司の勘ぐり」)のような原始的な防衛機制に訴えていたのでしょう。男の子は女の子を「もてあそぶように、味わうように、ガラス越しに見る」(デビュー曲「サブリナ」)ことしかできないと歌うところに、尾崎には欠落していた、家入のジェンダーに関する鋭い感性を読み取ることができると思います。