日本のフェミニズムと新自由主義

 私は右派の考えを知るために(私自身は中道左派です)、毎週日曜日の午後にはテレビで「たかじんのそこまで言って委員会」を視ています。今日は生命倫理特集で、最後に「なぜ人を殺してはならないのか」という問いが出されました。10人のパネリストのうち、「命ってすごいんです」(育児中の女性タレント)「人は、神様がいいというまで生きなければならない」(男性高齢者)と、社会の「共同善」に言及して回答したのは2人だけで、あとの8人は、「自分がされて嫌なことは人にしてはならない」という日本的な「セラピー的宗教倫理」(拙著「男らしさという病?」、2005年、参照)に依拠して回答していました。新自由主義が日本人の「心の習慣」(R・ベラー)に与えた影響力には、深刻なものがあるようです。
 「人間関係のゴールデンルール」は、「自分がしてほしいことを人にする」ことではなくて「自分がされて嫌なことは人にしてはならない」ことだと主張している、元内閣府男女共同参画局局長・坂東眞理子さんの『女性の品格』(PHP新書、2006年)が大ベストセラーになり、坂東さんと自称「庶民」の元東大教授・上野千鶴子さんとの対談集『女は後半からが面白い』(潮出版創価学会のお抱え出版社、2011年)もそこそこに売れたことを考え合わせると、日本人が新自由主義の「心の習慣」に対する影響力を自覚できるようになりまでには、まだ時間がかかりそうです。