タイのジェンダー秩序

http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1806330&media_id=95 より転載
ニューハーフと美女の見分け方


世界一美しいニューハーフを決めるコンテストが毎年開催されるタイは、ニューハーフのショーパブも多く存在し、観光ツアーに組み込まれているほど人気です。タイ人ニューハーフは、どれくらい美しいのでしょうか?
そこで、ニューハーフ密着取材特集をしたことがあるバンコク日本語情報誌『DACO(ダコ)』編集部の中西哉恵(なかにし・かなえ)さんに、タイのニューハーフ事情についてうかがいました。


■客室乗務員として働く人も
――タイのニューハーフ事情について教えてください。
中西さん 「タイでは、一般企業、コンビニや百貨店の店員として働いている人も多く、経営コンサルティング会社などの中枢部や女性の客室乗務員のように、多くの人があこがれる地位や職業に就いている人もいます。
多少は『あの人、ニューハーフ?』とささやかれたり、性格がよくなければ『だからニューハーフは困るのよ』と言われたりすることもありますが、基本的にはニューハーフかどうかを気にする人はあまりいないと思います。その人の実力や人柄次第で、聖職など規制のある職種以外は、彼らの望む社会で活躍できるのではないでしょうか」
――性転換手術も盛んなようですが、医療事情はどうですか?
中西さん 「日本からもメディカルツーリズム(医療観光)のプログラムで性転換がメニューになっています。
タイはある意味、世界中で知られる性転換の聖地(?)です。男性から女性への性転換手術の費用は25万バーツ(約70万円)前後からあるようです。
しかし、手術の合併症など不測の事態に的確な対処ができるような信用がおける名医は十数人ほどと言われています。
日本と同様にタイでも、手術施行前に半年くらいの時間をかけて、精神科医の診断を仰ぎ、性転換によってその人は幸せになれるのか、医師が多角的にみて判断してから執刀します。
性転換手術を受けたら、二度と元の性に戻すことができないので、慎重であるべきなのですが、すべての人がそのような工程をたどっているかは謎、つまり怪しいと言われています」
――ニューハーフコンテストも多いのですか?
中西さん 「毎年秋に、諸外国のミス代表と競う『ミス・インターナショナル・クイーン』(2011年は11月4日開催予定)を頂点として、国内の代表を決める『ミス・ティファニー・ユニバース』などが有名です。これは毎年5月にパタヤで開催されます。
ミス・ティファニーに出場する人は、芸能界や航空会社で働いている人がほとんどです。編集部が密着取材した2007年のミス・ティファニーのフィルムさんは、ニューハーフのコンテストを1年で80ステージをこなしたと話していました。
出場した大会で1位や2位をとるうちにプロモーターにスカウトされ、ミス・ティファニーに出場することになったそうです」
■激しいニキビ痕(あと)に厚化粧!?
――ニューハーフの人と、普通の美女の見分け方はありますか?
中西さん 「声が低いことですね。次に、骨格ががっちりしていて、手足が長く大きい人。あと、口元で分かることもあります。口と歯が大きいとニューハーフの場合が多いですね。タイ人男性は背が低い場合が多いので、身長では判断しにくいかもしれません。
また、超ボディコンやぴちぴちのミニスカート、胸を強調した服など、お色気ファッションが過ぎると疑うことはあります。メイクが異様に濃かったり、クネクネとわざとらしいほど女っぽいしぐさをしたりする場合などです。
激しいニキビの痕(あと)に厚化粧をしている人を見ると、『あれ!?』と思うこともありますが、ニューハーフコンテストに出るような人は、間近で見ても分かりにくいですね」
――元男性と知らずに恋してしまう人も多いのでは?
中西さん 「繁華街のお店では本当にきれいな元男性が多いのですが、どちらかというと、ニューハーフと知っていても、その美しさに面くらってファンになってしまった日本人男性の話をよく聞きます。
また、タイの芸能界で大活躍しているニューハーフアイドルの『ポーイ』は、大ファンになるタイ人男子が続出しています。ポーイは、どこからどう見てもキュートな女性で、女の子のファンも多いようです」
――どうしてタイはニューハーフが多いのでしょうか?
中西さん 「タイ人の『マイペンライ(気にしない)』に並ぶ口癖でもある『サバーイ・サバーイ(気楽に、気楽に)』に象徴されるように、タイは良くも悪くもすべてにおいて、無理せずありのままでいい、というお国柄です。日本と比べるとジェンダーの壁は極めて低いように思います。
ニューハーフに限らず、ゲイやおなべの人も、日本ほど偏見や差別を受けることはありません。『男でもいい。女でもいい。どっちでもいい』と考える人が多いので、ニューハーフとして生きやすい国なのではないでしょうか。
いずれにせよ、タイに同性愛者が集まる理由を、歴史や人類学や統計や生物学など、全部ひっくるめて分析したら、興味深い説が出て来そうです」
日本でも性同一障害を題材にしたテレビドラマやドキュメント番組が増え、ニューハーフの理解が深まってきましたが、そのうち、タイのニューハーフ事情が1つの研究分野として注目される日が来るかもしれません。


監修:中西哉恵氏。『DACO』編集者。男友達がニューハーフアイドルの大ファンであることに興味を持ち、「ミス・ティファニー」優勝者密着取材を企画。『DACO』は1998年創刊のバンコク日本語情報誌(http://www.daco.co.th)。バンコクの地名由来や、タイ人の職業観、バナナ図鑑など、毎号独自の視点で組まれる特集が在住者や日本のタイ好きの人々に人気。日本国内では大手書店、アジア文庫(東京・神保町)、旅の本屋のまど(東京・荻窪)で入手可能。


(下関崇子/ユンブル)