東日本大震災とPTSDのケア

JMM [Japan Mail Media] No.634 Extra-Edition より引用


 南相馬市から第一原発にかけて、精神科があるのは、双葉病院、双葉厚生病院、小高赤坂病院、雲雀ヶ丘病院で、計500床ありましたが、今回の震災で、すべて閉じられました。精神科の医師はいなくなってしまいました。今後、PTSDが問題になるであろうこの事態に、精神科医がいないという状況は、ますます具合が悪いでしょう。
 今回の福島での活動で、県立相馬高校の養護教諭の只野喜代美先生にお話を伺いました。PTSDをかなり気にかけていて、彼女自身、非常に心労していたように見えました。
 相馬高校は18日に始業しました。只野先生は、生徒が保健室にごった返すのではないかと心配していたようですが、実際は、学校全体が驚くほど静かだったそうです。「大丈夫なのかな」と思っていたところ、今年新1年生の女の子が保健室に来て、少し休みたいと言ってきました。この子は、津波で実家が流され、家にいた祖父母は亡くなったそうです。時々、ふと突然、涙が流れるそうです。先生方も、生徒にどう接していけばいいのか分からず、困惑しています。
 只野先生は、自分が学校全体の心のケアをしなければいけないと考えているようで、しかし相談する相手も良くわからずにいました。只野先生が言うには、他の学校の養護教諭も自分と同じような心境だそうです。どなたか、専門性のある方が指導、支えてあげられたらと思います。
 今週から、アースデイ奄美という精神科の先生のグループが、避難所などを回って、状況把握、対応を計っています。約一ヶ月滞在の予定です。阪神大震災の時も、PTSDは問題になりました。アースデイ奄美のみなさんを含め、福島県沿岸部の精神疾患の対応をしてくれる先生が増える事を願います。


*「心的外傷→PTSD→専門家による治療」というのは短絡的な発想だと思います。心の痛みは、年単位の長い時間をかけて、「普通の」穏やかな人間関係の中でしか癒えないものだと思います。