世界同時少女革命ーディズニー映画と「戦闘美少女」

http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201004090333.html 『朝日新聞』2010年4月9日号、より転載

19歳、アリスは戦う 奇才ティム・バートンが3D映画


 奇才ティム・バートン監督が、「不思議の国のアリス」を題材に3D映画「アリス・イン・ワンダーランド」を撮った。19歳になったアリスが再び不思議の国で冒険を繰り広げる。バートン監督は「素晴らしい人間は皆正気じゃない」というメッセージを込めたという。17日から公開される。
 今回のアリスは英国の上流社会に息苦しさを感じている女性。親が決めた男性に求婚された時、服を着た白ウサギが現れて別世界に連れ込まれる。そこは残忍な赤の女王が支配する「アンダーランド」と呼ばれる場所だった。

■「素晴らしい人間は皆正気じゃない」

 バートン監督は社会に適合出来ない少女の成長を描く。「僕自身が子供の時、周囲に奇妙な人間と見られてきた。アリスは女性だが、彼女の成長は性別を超えた普遍的なものだと思っている」
 監督の思いは、映画の冒頭で幼いアリスに父親が聞かせるセリフ「素晴らしい人間は皆正気じゃない」に集約されている。「この作品にとっても、僕自身にとっても、重要な言葉だよ。僕の映画はいつもこの言葉がテーマになっているって? ハハハ。確かにそうだね」
 アリスを演じるのは新鋭ミア・ワシコウスカ。「アリス役は時間をかけて探した。ミアは知性と成熟がある。社会に不適合な感覚を持ちながら静かな力強さも秘めているんだ」
 クライマックスで、アンダーランドのためにアリスが戦う。よろいをまとった彼女の姿は、日本のアニメでおなじみの、戦う少女をほうふつさせる。「米国では少女が戦うことはあまりない。僕も日本のSF映画やアニメに影響を受けているよ」
 アリスを守る謎めいた男をジョニー・デップが演じる。バートン監督とは「シザーハンズ」(1990年)以来の盟友だ。「ジョニーはどんな役にも意欲的に取り組む。虚栄心を持っていないんだ。彼と一緒なら新しい試みに自由に挑戦できる」
 今回も奇抜な化粧を施した上にCGで目玉が異様に大きくなっている。「二枚目が台無し? そうだね。二枚目のジョニーはほかの監督の映画でたくさん見られるよ。僕の映画ではこれでいいだろう」
 バートン監督は20代の頃、ディズニーでアニメーターとして働いた。今回は久々にディズニー配給作になる。「ディズニーとの仕事は、とても意味のあるものだ。ただし僕がディズニーらしさを出せるのはこれが限界。『ハンナ・モンタナ ザ・ムービー』のようにはいかないよ」
 同じディズニーの明るいアイドル映画の名を挙げてニヤリと笑った。(石飛徳樹)


*「宮崎駿監督の『もののけ姫』へのオマージュを込めた」(ジェームズ・キャメロン談)『アバター』の世界的大ヒットといい、『世界同時少女革命』は、やはり確かに進行しているようです。