嗜癖とジェンダー

 つらい現実に直面したとき、そこから一時的に逃避させてくれる嗜癖の対象はいろいろあるが、なににはまるかは男女差がある。
 男性は、酒、ばくち、それに女。女性のほうは過食に、ショッピング。女性も酒やセックスにはまる場合があるが、アルコールやセックスへの依存は「女のくせに」と敷居が高い。対して男性は、もともと「男らしさ」のアイテムに「飲む/打つ/買う」の3点セットがあるから、これらにはまることへの抵抗が少ない。
 アルコールを鯨飲し、ばくちに大枚をはたき、漁色家であることが、「男を上げる」条件だとカンちがいしている人もいるくらいだ。男のほうが絶対に現実逃避的だとわたしはにらんでいる(上野千鶴子『男おひとりさま道』文春文庫、2012年(初出2009年)、pp239-240)。


*一昔前の話という感もありますが、傾向性としては今も残っているでしょう。