近代家族と治療の困難性

 ここで現代家族の治療は難しいという留保を置くべきだろう。近代核家族は、きわめて特殊なシステムである。少数の個体が、重積した役割と価値と原型と生活のモデルを代表し、臨機応変の使い分けを行なう。このような過剰負荷された少数の個人よりなる集団においては「可処分性」(disponibilite)が極小である。これは、選択肢が少ない自由度が乏しいという意味である。こういうシステムはきわめて変えにくく、それ自身の軌道を歩みつづける(中井久夫『治療文化論』岩波書店、1990年、pp.70-71)。


*「近代家族のネガ」としてアダルトチルドレン概念が登場した理由のひとつでしょう。