ゲームセンターとしてのハルキランド

斎藤美奈子『文壇アイドル論』(文春文庫、2006年(初出2002年))
 初期の村上春樹を「住宅街のはずれにあるこじんまりとした喫茶店」にたとえ、読者はそこに集まる客であり、次々に発表される小説はゲーム機であるとしています。こじんまりとした喫茶店からどんどん進化を遂げるハルキランド。客はあたえられたゲーム機に込められた謎を一生懸命解こうとします。そしてついにハルキランドはゲームを置いている喫茶店からゲームセンターに変貌するのです。そのようなたとえで村上春樹の小説に込められたメッセージを解読しようとムキになっている読者(批評家たち)を揶揄しています。


*上手いたとえですね。このたとえを応用するならば、ハルキランドの客たちは、ゲームセンターの外の「新たな貧困問題」にはあまり興味がないようです。