レイプと男の性の謎

 強姦については、ある泌尿器科医に生理的に不可能ではないか問うたところ、そのとおりで、われわれには理解できないという答えであった。相手の抵抗を打ち砕くための骨格筋活動の際には、格闘技すべての際にそうであるように、ペニスは萎縮している。そこで、萎縮するペニスに刺激を繰り返しつつ挿入するのであるという説と、相手が解離によって疑似死化(フリーズ)した場合に性行為を開始するという説もある(これでは屍姦である)。しかし、相手の抵抗によって性的に煽られる者もある。このような、平時には犯罪者となっている者が戦争の際に主役を演じることは予想以上に多いだろう。ひとつの悪は百の善を帳消しする。それは権力化した性である。なお、略奪、暴力、強姦の際に「低いレベルの自己統一感」が生じることも無視できないであろう(註)。スポーツの際には葛藤の棚上げによる統一感が生じるが、その遙かな延長線上にあると考えてみると少しは理解しやすくなるかもしれない(中井久夫『樹をみつめて』みすず書房、2006年、「戦争と平和をめぐる観察」より;pp.83-84)。

(註)ドナルド・G. ダットン (著), スーザン・K. ゴラント (著)『 なぜ夫は、愛する妻を殴るのか?―バタラーの心理学』 作品社、2001年


*レイプの多くは、相手が解離によって疑似死化(フリーズ)した場合に性行為を開始するのでしょう。