日本の宗教伝統と<暴力>

 特殊にして具体的なる人倫的組織が絶対視されると、それを擁護し発展させることが絶対的意義をもつようになる。したがって自己の所属する人倫的組織の存立がおびやかされる場合には、武力をもってでもそれを守ろうとする。(中略)
 日本人の尚武の気風は、一部の禅者が弟子を鍛えるにあたって機鋒峻烈であった事実にも認められる。(中略)
 こういうわけで、日本では仏教が特に禅を通じて剣道の精神的根拠を与えることになった。(中略)
 ここでは戦いにおける殺生の行為が仏教に基礎づけられている。仏教が、戦いにおいて生かされるということをめざしたのは、おそらく日本仏教にのみ見られることであろう(中村元『東洋人の思惟方法3』春秋社、1962年;pp.224-232、「力による人倫的組織の擁護」より)。


 オウム真理教事件の問題は、おそらくここまで掘り下げて考察する必要があるでしょう。