戸田城聖氏のアルコール依存症

 創価学会二代会長・戸田城聖氏(1900-1958)の飲酒がどの程度であったか、NHKの元ディレクター吉田直哉氏は、取材した時の様子を次のように記しています(場面は、戸田氏が法華経講義に臨む定刻の直前です)。

◆想像もしなかったことばかりが起きた。
 「グイッとあけな、グイッと」
 「……いえ、これから撮影…。仕事中ですから」
 「なにィ?それを言うなら、こっちだって仕事中だぞ」
 黒ぶちの眼鏡の奥からにらまれ、これはからまれる、と確信したがコップを手にするのも勇気が要(い)った。尋常ならぬウィスキーなのだ。
 こんな荒っぽい飲みかたは見たことがない。角ビンのウィスキーを大ぶりのコップのふちまでドクドク注いで、申し訳のようにほんの少しビールを垂(た)らして割って、机の上に溢(あふ)れさせるのだ。その濡(ぬ)れた机の上を、波を立てるようにさらにコップを押してよこして、飲め!
 とこんどは大声の命令である。

(中略)

 ひとくち飲んで不覚にもむせると、
 「グイッとあけな」
と眼がすわっている。ビールをあおりながらウィスキーをストレートでのむのを、アメリカではボイラーメーカーと呼ぶ、というのはのちに得た知識だが、ビールとウィスキーの量がこの場合逆転しているのだ。いかに教祖でどんな酒豪でも、酔わないわけがない。

(中略)

 そうこうするうちに屈強な若い人が呼びにきて、戸田氏は立ち上がった。ネクタイは右の方にはね上がり、スボンは下がってシャツの裾(すそ)が半分以上出て、みるからに酔漢(すいかん)の姿である。(吉田直哉「映像とは何だろうか」岩波新書、2003年;pp2-5)