学会テーマセッション

「宗教と社会」学会第17回大会テーマセッション/6月7日(日)創価大学にて、14時から17時まで

*「民衆宗教」研究の新展開(2)―「民衆宗教」とフェミニズムの対話

企画・司会 熊田一雄(愛知学院大学
報告(1)「日本の精神科医療の男性中心主義」信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)
報告(2)「天理教教祖は強い父の夢を見たか?―宗教界と宗教学の共犯関係―」熊田一雄
報告(3)「救いの場におけるジェンダーセクシュアリティ―非対称的な親密性の発生をめぐってー」渡辺順一(金光教羽曳野教会)
報告(4)「『いのち』教とフェミニズム」(仮題)菱木政晴(同朋大学
コメンテーター 島薗進東京大学
フロアとの総合討論

<趣旨>
 このテーマ・セッションでは、前回に引き続いて、学会プロジェクト・「民衆宗教」研究会の研究経過報告を行う。前回は「階級」を主題にしたが、今回は「ジェンダー」を主題とする。
 「宗教とジェンダー」については、これまでもこの学会で何度も優れたセッションが開催されたが、1.分析の焦点が歴史宗教の教義上の性差別問題に偏っており、民衆の生活現場の生々しい苦難と救いの分析が立ち遅れ気味であること、2.女性フェミニスト研究者による宗教教団の性差別批判が先行し、宗教に関わる男性たちがフェミニストの問題提起にどう答えるか、という問題がまだ本格的に扱われていない、というきらいがある。このセッションでは、民衆の生活分析の生々しい苦難から出発し、男性宗教者・宗教学者フェミニストの問題提起にどう答えるべきか、を討論する。そのために、報告者とコメンテーターは、意図的に男性を中心とした。
 信田さよ子は、フェミニスト・カウンセラーとして、民衆の生々しい苦難の現場から日々浮かびあがってくる日本の精神科医療の男性中心主義を批判し、他のパネリストに対する問題提起を行う。熊田報告は、島薗進天理教教祖論を素材として、日本の宗教界と宗教学が、男性中心主義という点で共犯関係を結んでいることを批判する。渡辺報告は、フェミニストによる教団批判を踏まえた上で、教団としてジェンダー問題にどう答えるべきかを論じる。菱木報告は、近年「いのち」教として民衆宗教的性格を深めている浄土真宗大谷派が、フェミニストの問題提起にどう答えるべきかを論じる。コメンテーターの島薗は、大局的見地から論点の整理を行う。
 もとより、各報告のテーマはとても大きく、なおかつ日本の宗教界にとってデリケートな、できれば触れずに避けて通りたい(?)テーマである。各報告者は、話題を提供するに過ぎない。このセッションが、フロアを巻き込んだ活発な全体討議のたたき台になれば幸いである。