センチメンタル宗教学について

 東京大学島薗進氏(日本宗教学会現会長)の宗教学を、「センチメンタル宗教学」と評したのは、反骨の宗教ジャーナリスト・藤田庄市氏です。島薗氏は、新宗教研究を「学問」として確立した傑出した研究者ですが、島薗氏が論じると、新宗教の信仰世界が「きれいごと」になってしまう、という意味です。新宗教の信仰世界を「きれい」に描き出すことによって、島薗氏が新宗教の現実から捨象してしまったものは何か、をきちんと言語化することは、私たち後続の研究者の使命だと思います。拙論「天理教教祖と<暴力>の問題系」「明治日本の宗教者とエートスとしての<侠>」も、その方向に向けてのささやかな試みです。