学会テーマセッションのお知らせ
6月15日(日)に、南山大学で開催される「宗教と社会」学会にて、テーマセッションを開催します。
<テーマ>「民衆宗教」研究の新展開―新しい「階級」の時代の宗教社会学
<代表者>熊田一雄(愛知学院大学文学部宗教文化学科)
<発表者の構成>
司会 熊田一雄(愛知学院大学)
報告1 「民衆宗教」と福祉 白波瀬達也(関西学院大学)
報告2 「民衆宗教」と暴力 熊田一雄(愛知学院大学)
報告3 「民衆宗教」とジェンダー 薄井篤子(神田外国語大学)
報告4 「民衆宗教」としての創価学会 中野毅(創価大学)
コメンテーター 島薗進(東京大学)
<趣旨説明>
このテーマセッションでは、3年前に発足し、すでに宗教学会で3回パネル発表を行った民衆宗教研究会の研究経過報告を行う。社会学の三大研究テーマは、人種・階級・ジェンダーであるが、近年の日本の宗教社会学では、格差社会が大きな社会的問題になっているにもかかわらず、「階級」という問題意識が弱くなっている感がある。私たちは、「民衆宗教」を、かつての歴史学のように実体概念として用いるのではなく、研究者の立場性の問題と考え、「生活者の視点」に立った宗教研究を「民衆宗教」研究と考える。グローバリズムと新自由主義的風潮の中で、「アメリカ金融資本の御用学問」としての側面がある「スピリチュアリティ」研究に対するアンチテーゼとして「民衆宗教」研究を構想する。
白波瀬報告は、釜が崎における各種宗教団体のホームレス支援活動についての調査に基づいて、格差社会における宗教と福祉の関係について考察する。熊田報告は、天理教を事例として、これまで教団や研究者が目をつむってきた新宗教と「暴力」の際どい関係をクローズアップし、それによって日本の宗教界の現状を批判する。薄井報告は、新宗教の婦人部についての調査に基づいて、「女女格差」が問題化される時代状況にあって、行政フェミニストや大学フェミニストとは事情の異なる、中下層階級の女性とフェミニズムの関係を再考する。中野報告は、創価学会の「民衆宗教」としての側面を新たに検討し、総力戦体制=システム化社会(Warfare Society=Welfare Society)の中で基本教義を形成した教団が現代のグローバリズムに対応できるのかを報告する。コメンテーターの島薗は、大所高所から、論点の整理を行う。
もとより、各報告の論題はいずれもひじょうに大きいテーマであり、とうてい一個人に論じ尽くせるものではない。各報告者は、結論を出すのではなく、あくまで問題提起を行うにすぎない。各報告が、フロアを巻き込んだ活発な討議の叩き台となれば幸いである。