パタニティーブルー

http://mainichi.jp/select/news/20140828k0000e040219000c.html より転載
子育て:イクメンも悩み?パタニティーブルー 


 子育てに熱心な父親「イクメン」が脚光を浴びる中、「パタニティーブルー」なる言葉が話題になっている。「パタニティー」は父性、の意味。母親が出産後などに自信喪失や涙もろさ、いらいら感に襲われる「マタニティーブルー」の言わばパパ版、らしい。それって本当にあるの?【小国綾子】


 東京都内の会社員(34)は、マタニティーブルーの妻に「気が狂いそう」と泣いて訴えられ、乳幼児2人の育児を分担し始めた。勤め先は「男性の育児休業取得の前例さえない、古い体質の職場。急な発熱で出勤を遅らせたり、早退したりするだけで白い目で見られ大変だった」。週末は泣き叫ぶ子供たちの世話に明け暮れる。手間をかけた食事を食べてもらえず「せっかくの休日に俺は何をやってるんだ?」と自問することもあった。「我が子に憎しみが生じ、自分が怖くなったこともあります」
 「主夫」として育児に専念しながら、その大変さを会社員の妻に理解してもらえなかった埼玉県のフリーデザイナー(48)は心身のバランスを崩し心療内科を探すところまで追い詰められた。「必死にやっているのに、妻が帰宅すれば子供たちは『ママー』。報われない。自分が壊れそうだ、暴れだしそうだと思った」
 「男性は、女性の産後のようにホルモンバランスが変化して身体的影響を受けることはない。だが妊娠期がない分、母親よりも急激に精神面や環境の変化にさらされる」。そう解説するのは大阪教育大の小崎恭弘・准教授(育児学)だ。
 とりわけ男性の場合、ばりばり仕事をしている自分と育児とのギャップが「ブルー」につながるようだ。40代後半で父親になった都内の大学教授(51)は、共働きの妻と交代で料理や皿洗いをしながら「論文が書きたいんだ。飯をつくるのがうまいだけのオッサンになっていいのか」との思いが消せず、仕事と育児の板ばさみに苦しんだ。そんないらだちから、泣きやまない0歳の長男をベッドに放り投げてしまったこともある。「俺には育児能力がない」と自己嫌悪に陥った。
 連合の2013年の調査によると、1000人の男性のうち自分の職場が「男性も子育てをしながら働ける環境にある」と答えたのはわずか2割。子供のいる男性525人のうち11.6%が「育児は母親の役割」「キャリアに傷がつくぞ」と言われたり、育児関連制度利用をさせてもらえなかったりといった子育て関連ハラスメント(嫌がらせ)を受けていた。