現代日本のグノーシス症候群

(前略)高い誇りをもつ「聖徒」の、罪と恥辱にまみれた孤立と拒絶の身振りがそこにある。遠い「光」の異界とのつながりという側面から見れば「天使」であるが、罪にまみれ、殺意に満ちた暴力性の「闇」を体現しているという側面では「悪魔」の徒と感じている。汚れているのはまずは外部の世界であり、至るところにあふれる「汚れ」た他者たちであるが、実は自分こそが汚れ、悪を体しているのだという意識も免れない。これが、現代の「異邦のもの」たち、哲学や文学の素養などあまり意に介さない「コミック読者・アニメ視聴者=聖徒」たちの自画像である(島薗進グノーシスと現代の物語」大貫・島薗・高橋・村上(篇)『グノーシス 異端と近代』岩波書店、p277)。