男性の<身体性>からの疎外

 グレーゴルの昆虫への変身は、カフカの、自らの身体に対する、また身体一般に対する両義的態度を強烈に表現している。グレーゴルの身体が変化したこと、そしてそれに彼自身が気づこうとしないことーこれが伝えるのは、グレーゴルがいかに自分の身体から疎外されているかである(リッチー・ロバートソン『カフカ岩波書店、2008年、p.71)。


カフカの『変身』を、近代社会における男性の<身体性>からの疎外を描いた小説として読むことも可能でしょう。同様に、カフカの傑作短編『断食芸人』を、<疎外された身体>を超克しようとした男性の物語として読むことも可能でしょう。