「身代(みがわり)」という言葉

メルマガ『暮らしの中の仏教語 第342話』より引用
第342話 通算1001話 みがわり 身代 代受苦

 
 日本語には、同じ漢字を書きながら、読み方で「表すものが違う」言葉がたくさんあります。「身代」もその一つでしょう。
 身代という和製仏教語は、ミガワリと読み、他人の身に代わってその人を救う行為を指します。「身代の如来」は阿弥陀様のことですし、「身代地蔵尊の寺」として信者を集めているお寺もありますね。
 そういえば、お地蔵様の役目として最も大切なものは、抜苦与楽です。「人から苦を抜き、楽を与えること」ですが、その一つの方法として代受苦があります。もちろん代受苦とは、人が苦しんでいる時、代わりにその苦しみを受けてくださることです。お地蔵様にお願いをするだけで、苦しまなくてもよくなるのですから、なんとも有難い話ではありませんか。
 ところで、「身代」を「身代わり」と送り仮名する時がありますね。ほかの読み方をされると、意味が変わってしまうからです。 身代には、ミノシロという読み方とシンダイという読み方があるでしょう。ミノシロは、身代金という言葉があるように、身の代金のことです。 また、「身代を潰す」などと使われる身代はシンダイと読んでいます。この場合の身代は、財産や暮らし向きのことで、「進退」から出た語だそうです。
 身代をミガワリと読むかミノシロと読むかシンダイと読むかで、ずいぶん意味が変わってしまいますね。 ですが、払った身代金も、無くした身代も、本人の「身代わり」になって消えたお金・財産だったと思えば、どうでしょう。
 送り仮名によって三種の身代を区別している現代語ですが、本来は「身代を、送り仮名無しでもミガワリと読んだ」ことを、知っていてほしいと思います。あわせて、身代(みがわり)をしてくれる仏・菩薩のことも、覚えておいて戴ければ幸甚です。