繫驢桔

 なにやらむずかしい言葉ですが、繫驢桔(けろけつ)とは「杭(桔)につながれたロバ」のこと。悩みから自由になりたいともがく人のたとえです。


もがけばもがくほど自由を奪われる
 縄で杭につながれたロバが自由になろうと歩き回ったところで、縄をふりほどくことはできません。かえって杭に縄が絡み、身動きがとれなくなってしまいます。
 自由になろうともがくことで、ますます自由を奪われてしまう状態を、このがんがらじめのロバにたとえて「繫驢桔」といいます。もともとは禅の世界で使われてきた言葉です。


悩む人の心理はまさに「繫驢桔」
 悩み苦しんでいる人の状態は、身動きがとれないロバと同じです。不安や恐怖から逃れようとすると、かえってその感情が強く意識されます。それでもなんとかしたいともがき続ければ、不安や恐怖に囚われ、身動きがとれないことになってしまいます。この状態はまさに「繫驢桔」です。
 杭につながれていても、無理にふりほどこうとしなければ、ロバは草でも食(は)みながらゆったり過ごせます。悩みもまた同じです。不安や恐怖という縄に縛られているようでも、そのまま我慢していれば、けっこう、いろいろなことができるものです(北西憲二(監修)『森田療法のすべてがわかる本』講談社、2007年、p.36)。