カフカの自信

 個々人に対する後世の判断が同時代人のそれよりも正しいことの原因は、死ということにある。人間は死後にはじめて、ほんとうにひとりになってはじめて、その人らしい発展を遂げるのである。死とは、個々人にとっては、煙突掃除人にとっての土曜日の晩に等しい。どちらもが煤を、身体から洗い落とすときである。すると同時代人が彼にか、それとも彼が同時代人のか、どちらがより多くの傷を与えたのかが見えてくる。この後者の場合、彼は偉人だったことになる(フランツ・カフカ『夢・アフォリズム・詩』平凡社ライブラリー、1996年、p.222)。


*生前には、ごく一部の目利きには見いだされていたとはいえ、ほぼ無名に近かったカフカが、自分の作品が死後に高く評価されることを確信していたことがわかる文章です。