「焦慮」と「余裕」

 統合失調気質者や統合失調症を経過した人の味わいうる生の喜びの一つは「余裕感の中で憩う」ことであって、その味わいの深さは、あるいは他の気質の人の知りえない種類のものであるかもしれない。私は患者に治療目標の設定を、「あなたが何かをしてもよいが何かをしなければいけないとは感じないだけのゆとりのもてるところ、何かになってもよいがならなくてもよいだけのゆとりのあるところまで、お互いに努力するということと思うがいかがでしょうか」という意味を話して行う。「それからはあなたの自由である」とも。実際それ以上は個人としての患者の人生への過度の介入であり、それは患者に一つの脅威あるいは陥穽と感じられると私は思う(中井久夫「統合失調者における「焦慮」と「余裕」」『統合失調症1(精神医学重要文献シリーズ)』みすず書房、2010年;pp.108-109)。


*「統合失調気質者」のひとりである私としては、よく理解できます。