世界日報の社説

http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh100327.htm より転載


都青少年条例/漫画の児童ポルノ規制は当然


 児童ポルノ事件は昨年、過去最多を記録した。国際社会からは日本の対応が甘いと非難されている。とりわけ漫画やアニメには子供の性行為や虐待などを描く児童ポルノが野放し状態だ。そこで東京都はこれを規制しようと青少年健全育成条例改正案を3月議会に提案したが、「表現の自由を脅かす」と批判され、継続審議となった。
 都議会の対応は遺憾である。漫画であっても児童ポルノは許されない。根絶に積極的に取り組んでもらいたい。


有害情報が野放しに


 漫画やアニメの有害情報は目に余るものがある。強姦や近親相姦、親を斧で殺すシーンなど反社会的なものも少なくない。これらに触発された少年事件も後を絶たない。漫画であれアニメであれ、架空だからといって有害情報を野放しにしておくのは、影響を受けやすい子供たちの犯罪を誘発し、被害も増えかねない。
 今回、東京都が問題にしたのは漫画やアニメの児童ポルノだ。昨年、全国の警察が摘発した児童ポルノ事件は259件増の935件、被害児童も73人増の411人に上り、いずれも過去最多だ。漫画などにはそうした児童ポルノが多く描かれており、子供でも書店やネットで簡単に手に入る。
 そこで都の改正案は、漫画やアニメ、ゲームなどに登場する18歳未満の架空の人物を「非実在青少年」と規定し、これらが「みだりに性的対象として描写」され「性に関する健全な判断能力の形成を阻害」する作品は青少年に販売しないよう業者に求めるとした。
 また「強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもの」で、青少年の健全な成長を阻害する恐れがあると認められるものは不健全図書等に指定し、18歳未満への販売を禁止する。児童ポルノの「単純所持」についても禁止規定を盛り込んでいる。ただし罰則がない理念規定だ。
 これに対して漫画家や一部メディアは、表現の自由を脅かすと猛反発し、改正案にある「性交類似行為」の定義があいまいで運用が恣意的になり、裸が出る入浴やシャワーシーンもすべて規制対象にされるなどと批判した。民主党共産党などがこれに同調し、改正案は継続審議となった。
 だが、批判は表現の自由を履き違えている。確かに憲法表現の自由を保障しているが、同時に濫用を禁止し「公共の福祉」という枠組みをはめている。恣意的運用が懸念されるとする「性交類似行為」は、児童ポルノ法で使用されている用語で、手淫や口淫など実質的に性交と同視しうる行為を指し、何らあいまいな定義ではない。単なる入浴やシャワーシーンは規制の対象にならない。「単純所持」禁止は都民の意識を醸成するための規定だ。


6月議会で成立目指せ


 改正案は「表現の自由」を侵害する内容ではない。児童ポルノの発信地として海外で非難される日本の首都から、根絶への狼煙を上げる意義は大きい。対策に弱腰の政府へのメッセージにもなる。都議会は6月議会での成立を期すべきだ。