女性学会シンポジウムの感想

*「日本女性学会ニュースレター」(予定)より転載


2010年度日本女性学会大会シンポジウムを聞いて 
熊田一雄(愛知学院大学文学部教員)

 私は大学で宗教学を教えている「男性」教員である。私は、フェミニズム/女性学は当事者運動/当事者研究であると考えており、その意味でこの文章は、運動/研究のシンパではあるが「部外者」であるという立場からの感想である。大会シンポジウムは、「社会を動かす女性学」というタイトルで開催された。「女性学誕生の志にたちもどり、社会を動かすという視点から、女性学のこれまでをあらためて問い直したい。」(木村凉子さん)という狙いであった。フェミニズムに対するバックラッシュが目立つ昨今の日本の社会情勢に照らし合わせて、タイムリーな好企画であったと思う。総合討論では、フロアから「公立女性会館の提供しているサービスと現実の女性たちのニーズに乖離が生じており、金融危機のなかで、このままでは女性会館が『事業仕分け』の対象になるのではないか?」という問題提起がなされた。この冷徹な大局観は、間違っていないと思う。私は、学生に日本のフェミニズムについて1冊だけ本を読むのなら、例えば上野千鶴子さんの理論書ではなく、田中美津さんの『いのちの女たちへ』を読むように推薦している。日本のフェミニズムも、ウーマン・リブの初心を忘れるべきではないだろう。シンポジウムを開催することは、個人研究発表をすることよりもはるかに労多くして、困難なことである。シンポジウムを開催してくださった、関係者の方々の労に感謝したい。