レイプー男からの発言

 したがって、レイプとは、性的快楽や性的満足との結びつきよりも、「地位、憎悪、統制、支配」との結びつきのほうがはるかに強い性行動であり、疑似性的な行為である。性とは関係のない要求につかえる性行動なのである(ティモシー・ベイネケ『レイプー男からの発言』ちくま文庫、1993年、p.50)。


<レイプ被害者の代弁者は語る>
 世間一般の人びとと同様、警官も弁護士も裁判官も、レイピストは自分たちとは違う人間だと思いたがっている。そう考える方が、はるかに楽ですからね。あいつらは、性的異常者だとレッテルを貼るほうが、普段は正常なのに自分の暴力的な感情を吐き出す手段としてレイプを「選んだ」んだと考えるより、はるかに楽なんです(同上、p.321)。

 
 精神科医中井久夫さんの以下のような発言も、結局は「レイピストは自分たちとは違う人間」と思いたいという願望が入った一男性知識人の発言なのかもしれません。

(前略)強姦の際に勃起するのはごく一部の男性であろうと思えならない。暴力をふるう時には勃起できないのが生理的に順当だからである。射精に至っては、交感神経優位系が副交感神経優越系に急速に交代しなかればならず、それが暴力行為の最中に起こるのは生理学的に理解しがたい。しかし、そういう男がありうるのは事実で、古典的な泥棒は侵入してまず排便したというが、それと似ていようか(中井久夫『徴候・記憶・外傷』みすず書房、2004年;pp.314-315)。