消費ミニマリズム

 禅とともに人生を歩んだジョブズは、ミニマリストでもあった。ジョブズは1983年に、ペプシコーラ社の社長、ジョン・スカリーをアップル社のCEOにスカウトしたが、そのスカリーは、カリフォルニア州ジョブズの家に招かれたとき、「人が住んでいるという気配はまるで感じられなかった」と述懐している。ジョブズの生活は、大金持ちのイメージとは程遠いもので、家には家具すらほとんどなかった。その前年に撮られた有名な写真がある。ジョブズが自宅で瞑想する姿である。室内は、禅寺の僧堂のように簡素で静寂に満ちている。ジョブズによれば、「お金で買いたいものなんて、すぐ尽きてしまう」という。これは禅の考え方であると同時に、ミニマリズムの思想を表してもいるだろう(橋本努『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』筑摩書房、2021年、p277)。

 

*近代のオルタナティブを考える上で、ヒントになる話だと思います。