抗精神薬とプラセボー効果

 私の考えでは、プラセボー効果は暗示によるものではない。いや、結果的に暗示のようにみえるかもしれないが薬の服用にまつわる不安が薬の効果を減殺しているほうが大きいと私は思う。この不安を最少限にすることが重要であると私は思う。そもそも得体の知れない化学物質を他ならぬ体内にとりこむこと、それも向精神薬、すなわち外界の見え方や自己感覚をどの方向にどれほど変えるかわからないものをとりこむとなれば不安になるのは当然である。薬袋から取り出して初めて薬と対面するときの不安は診察であらかじめ減殺されていなければならない(中井久夫「SSM、通称丸山ワクチンについての私見」『中井久夫集10』みすず書房、2019年(初出2008年)、p94)。

*抗精神薬の処方と服薬の不安を最少限にする努力の大切さ。