依存症と「正直」

「人はなぜ依存症になるのか」
 断言できるのは、決して快楽を貪ったからではないということである。むしろ、そもそも何らかの心理的苦痛が存在し、誰も信じられず、頼ることもできない世界のなかで、「これさえあれば、何があっても自分は独力で対処できる」という嘘の万能感で自分を騙し続けたことー私にはそれが依存症の根本的な原因であるように感じられる。
(中略)
 逆にいえば、依存症からの回復にはこうした「嘘」を手放す必要がある。事実、多くの援助者や回復した当事者が、依存症からの回復で重要なのは「正直さ」であると口をそろえているし、私自身も臨床経験を通じてそのことを実感している(松本俊彦『依存という心理ー人はなぜ依存症になるのか』「こころの科学182」、日本評論社、2015年7月、p16)。


*依存症からの回復においても、「正直」という道徳が必要だということ。各種依存症の患者のための自助グループ(宗教)には、患者に「正直」になれる場所を提供しているという面があるのでしょう。