マインドフルネスの流行をどう見るか

 現在、アメリカを中心に欧米では、第三世代の認知行動療法として瞑想がさかんに行われていますが、ベースとなっているのはマインドフルネスの考え方です。マインドフルネスという英語の言葉は、日本人にはあまりなじみがありませんが、「気づくこと」という意味です。何に気づくかというと、「いま自分が生きている、この瞬間の現実」に気づくのです。現実を「正しい・正しくない」「すべき・すべきでない」「良い・悪い」といった評価を加えずに、あるがままに感じ、受けいれていくのが、マインドフルネスの考え方です。
 マインドフルネスの考え方を身につけることは、「不安」「うつ」のほか、「あがりやすい」「緊張しやすい」などいろいろな心の悩みの解決にも効果があります。また、がん、エイズ、高血圧などの患者さんのQOL(生活の質)改善にも利用されています(貝谷久宣(監修)『よくわかる/薬いらずのメンタルケア』主婦の友社、2011年、pp.76-77)。


*こうした、深いリラクゼーションによって症状を軽減しようとする瞑想・マインドフルネスの先進国における流行をどう評価すべきでしょうか?肯定的に見れば、精神医療(認知行動療法)が宗教(東洋の宗教)的伝統を取り込もうとしているともとれます。否定的に見れば、精神医療はまだ、宗教的伝統のなかでも、「エビデンス」(科学的根拠)となるデータがとれた部分だけしか取り込もうとしない、と見ることもできます。