境界性パーソナリティ障害の回復

(前略)境界性パーソナリティ障害の自己同一性の不安定さには、特定の役割や自己イメージに捉われないという長所が含まれていると考えて、それを柔軟性の高い自由な生き方へとのばしてゆくことができると思うのです。そのような試みを重ねるうちに、「もともと寄港地のない漂流船」であったとしても、ほっと一息つくことができる寄港地を新たに見つけることができると思うのです。
(中略)
 境界性パーソナリティ障害の特性は、社会や家庭で起きたさまざまな事情が重なったせいで生じてきたものと見ることができます。そこには、マイナスのものばかりでなく、希望となるものも含まれています。それを考慮しないで作られた対策では、未来に希望をつなげることは難しいでしょう。境界性パーソナリティ障害は、自分を活かす方向でしか回復の道が見出せない疾患です。現在の自分に希望の芽を見出して、そこから出発するしかありません。ひとたび出発したならば、他の多くの患者から示されている回復までの道筋や、これから議論する精神保健の専門家による治療をガイドにして前進することができるでしょう(林直樹「解題」タミ・グリーン『自分でできる境界性パーソナリティ障害の治療ーDSMー4に沿った生活の知恵ー』誠信書房、2012年、pp89-91)。


*「精神医療の厄介者」扱いされがちだった境界性パーソナリティ障害の患者には、希望のメッセージでしょう。