道徳新教材と二宮金次郎

 文部科学省は、2月14日、小中学校4月から使われる新しい道徳教材「私たちの道徳」を公表した。現行の「心のノート」に代わる位置づけで。偉人伝や格言を重視し、ページ数も約1・5倍に増えた。安倍政権が掲げる道徳教育充実の一環で、愛国心養成や伝統文化に関するページもある(『朝日新聞』2014年2月14日号夕刊、2面)。


*この記事によれば、この教材では小学校低学年には「二宮金次郎」が登場するようです。高度成長時代へのノスタルジアであり、現代ではアナクロニズムではないでしょうか?


 私はその後も外からはそう怠惰だとみられなかったようだが、労働は生活のために止むなくするものであるという感じがつきまとい、戦後の混乱期に強化された。私には管理された整然たる近代的職場より、たとえば東南アジア物売りのほうに働くものとしての親近感がある。
 ジャカルタの日系ホテルのティー・コーナーにみかけた二宮尊徳の少年像にはほとんど嘔吐をもよおした(私は二宮「自身」(原文傍点)の哲学には敬意を抱いているが、それは再建の戦略家であり、技術者としてであり、さらに、彼の醒めた眼にである)。受動的、画一的な労働をも私は甘受するが、神聖だとも、よいものだとも思わない(中井久夫「サラリーマン労働」『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫、2011年(原文1982年)、p131)。