うつ病と認知行動療法

 神田橋・原田・渡邉・菊池『うつ病治療ー現場の工夫よりー座談会』(メディカルレビュー社、2011年)を読了。基本的に精神科医向けの本なのですが、座談会で読みやすいことと、東京認知行動療法研究所の院長・原田誠一氏がうつ病認知行動療法をどう適用しているかを知りたくて読みました。


原田 今回いろいろな症例をご紹介しましたが、もちろん認知行動療法がすべての症例に効くわけではありません。
 神田橋先生が、いろいろな対応を工夫するのが楽しみだとおっしゃっていますが、私自身そういうお姿を拝見して自分なりの実践の中に、一部、認知行動療法を取り入れてやっています。私が申し上げたいことは、認知行動療法が何にでも効くという非現実的なことではなく、介入のポイントにいろいろな側面があるので、症例ごとの介入ポイントを明らかにして、そこに適切に介入する必要があるという当たり前のことです。(中略)こういう話はエビデンスになりにくいんですけど、やはりこういう工夫も大事ではないかと、それこそ臨床現場でうつ病を治療していて実感しているところです(同上、p167)。


認知行動療法の専門家は、「認知行動療法は、介入ポイントを工夫すれば、症例によっては効くこともある」というごく常識的な考え方をしているということです。「認知行動療法は簡便で何にでも効く」かのような幻想を振りまいている現代日本の一部のジャーナリズムとは、はっきり一線を画しています。