自傷とピアスをめぐる一考察

 私の授業の小レポートで、「高校時代に自傷にハマっていた」ことを書いてきた女子学生がいました、ちなみに、精神科医の松本俊彦さんは、自傷経験者は現在の10代の1割くらいではないか、と推測していますが、私の印象では、もっと多いです。やめさせる方法としては、「就職活動の時に不利になる」とはっきり告げるのが有効、というのが私の印象です。とにかく、その女子学生に、松本俊彦さんが書いていた「ゴム・パッチン法」(手首に輪ゴムを巻いて、切りたくなったら代わりにゴムをはじいて痛みを感じる方法)を紹介したら、「自傷は『からだの痛みで心の痛みに蓋をする』というのはその通りだと思うけれども、ゴム・パッチン法では痛みがすぐ消えるのでだめ」ということで、「ピアスをあけると、痛みがヒリヒリとずっと続く上に、おしゃれにもなるのでちょうどいい」ということでした。もちろん、ピアスをあけている人がみんなそうだとは思いませんが、自傷代わりにピアスをあけている人も、中にはいるのでしょう。


―今日、わが国のために弁ずる者は、わが国の犯罪率の低さを挙げる。たしかにその通りであろう。しかし、一方、わが国の精神病院入院者数が自由世界最大であるらしいことも挙げねば不公平というものだろう( 中井久夫「ある教育の帰結」『「思春期を考える』ことについて』ちくま学芸文庫、2011年(初出1979年))。